ブログ

たけまる / economics


2006-06-07 Wed

_ グローバリゼーションは貧困を救うか [paper][economics]

P. バーダン, "グローバリゼーションは貧困を救うか," 日経サイエンス,
pp.92-100, 2006 年 7 月. (Originally, Pranab Bardhan, "Does
globalization help or hurt the world's poor?," Scientific
American, April 2006.)

- Category: economics
- Rating: 4/5

経済のグローバル化によって貧しい人々もその恩恵を受けるのか? それと
も富が集中し,貧しい人はより貧しくなってしまうのか? 答えはそう単純
ではない (p.92)

貧しい国にとって先進国の資本はプラスになるのか,ということである.

事実を観察する限り,先進国の資本は貧しい国に雇用を生み出し,賃金を
上昇させている.

バングラディシュやベトナム,カンボジアなどアジアの貧しい国々では,
多くの女性が輸出用の衣料縫製工場で働いている.世界の基準でみれば賃
金は低いが,それでも他の仕事よりはずっと高い.こうした工場で搾取が
行われていると懸念する人々もいるが,工場のおかげで女性たちの生活と
地位が相対的に向上したことは評価すべきだ.(p.95)

一歩間違えると「先進国のご都合解釈」になりかねないが,貧しい国にとっ
て先進国の資本は「ないよりマシ」なのだろう.

貧しい国々にとって問題なのは,グローバル化の行き過ぎではなく,グロー
バル化のかやの外に置かれていることだ.(p.98)

しかし,先進国の資本が入ることに感情的な問題がふたつある.ひとつは,
貧しい国の中ではよい労働環境であっても,先進国と比べるとずっと悪い
こと.もうひとつは,もっともグローバル化の恩恵を受けるのは先進国で
あること.

貧しい国の零細な輸出業者はたいてい,豊かな国の市場に進出するために
必要なマーケティング網もブランド力もない.多国籍小売企業の力を借り
ることは可能だが,マージンや手数料がとても高い場合が多い.(p.99)

つまり,先進国の資本によって絶対水準としての生活水準は向上しても,
先進国と比べたときの相対的な格差はむしろ拡大する.物理的な貧しさは
改善されても,「搾取されているのではないか」という感情は強くなるか
もしれない.

なお,グローバル化が先進国に与える影響は [2006-05-06-1] を参照.

2006-05-23 Tue

_ 江戸時代,日本は世界経済と無縁だったわけではない [economics]

昨日の日経新聞夕刊に面白い記事がありました.

江戸時代,日本は鎖国状態にあったが,世界経済と無縁だったわけではな
い.オランダ東インド会社によって長崎から輸出された銅は,アジア経済
圏の根幹を担っていた.

日本から南アジアに銅が,南アジアから東南アジアに綿織物が,東南アジ
アから日本に香木や鹿皮が,というように三角貿易の一端を担っていたよ
うです.江戸時代の日本は鎖国状態にあったといわれますが,「幕府が貿
易を独占していた」という言い方が正確で,「鎖国」という言葉は適切で
はないのかもしれません.

たまに博物館などに行くと,江戸時代の文化や経済はかなり進んでいたと
いう印象を受けます.観劇などの娯楽やお伊勢参りの観光ガイド,米相場
などの経済システム,寺子屋などがあり,現在を支えているものはかなり
揃っていたようです.だいたい,明治になったからといって急に文明開化
したと考えるより,それなりの下地があったと考えるほうが自然に思いま
す.もっと江戸時代の文化を知ってもいいのかもしれません.

『定刻発車』は鉄道のダイヤについての本ですが,日本がすんなりと鉄道
をものにした理由が書かれており興味深いです.鉄道の鍵は,科学技術だ
けではなく組織運営力にあり,日本にはその技術があったとのことです
(欧米以外に鉄道を自力で運用した国は少ない).


2006-05-06 Sat

_ 良い経済学 悪い経済学 [book][economics]



国際経済のメカニズムを明解に記した良書です.特に,一般常識の間違い
をあばいていく過程は目からウロコです.ただ,学術論文を集めた本なの
で,学者の文章に慣れてないと読みにくいかもしれません.

続きを読む

Referrer (Inside): [2006-06-07-1]